6.

ふんふんふーんと鼻歌が口を付いて出る。
お気に入りのJ-POPは最近有線で流れている曲で、曲名は知らない。撮影の合間に聞いた。
そんな歌を口ずさんでしまうくらいには機嫌がいい。
そんな機嫌の良さで、前を歩く見知った人影を察知する。
「あれ、緑間っち?」
休日だというのに学ランを着込んでいる辺り行き先は学校なのだろう。
ただし秀徳はこの方面ではない。
この辺りの学校ならば即ち自分の目的地と同じ場所だ。
「黄瀬……なんだその浮かれた鼻歌は」
「えーそんな浮かれてるっすか?」
「それで浮かれていないと言い張るなら病院にいくべきなのだよ」
「まぁ確かにちょっと浮かれてるかもしれないっすね」
旧友の辛口コメントにも水を指されることはない。
むしろ共通の知り合い且つ目的に舌はより滑らかになるだけだ。
「楽しみっすねー黒子っち何やるんだろ」
「別に黒子が何をしていようが興味はないのだよ」
「じゃあなんで誠凛行くんっすか?」
「この辺りに用があるだけだ」
「だから誠凛の文化祭に行くんっすよね?」
「……」
とてとてとて――無言で歩く。
歩調が少しだけ早くなったような気はしたが、気にならない程度だ。そんなに早く行きたいのだろうか。早く行ったからといって開いている分けではないが。
自分と緑間っちでは歩幅はほとんど変わらない。
部活で集団行動を余儀なくされるときはあまり意識しないが、ほんの少しだけ気にするとしたら黒子っちだけだ。
バスケ部員の中では小柄な部類になる彼の歩幅を考える――以上によくよく迷子になる黒子っちが付いてこられるように意識される。
なにせ彼も端から歩調をあわせようという性格ではない。
それに黒子っちと一緒に帰れるときは、話していたから自然歩調は揃う。むしろ隣を確保するのが難しいが。
(懐かしいっすね……)
今だってずっと一緒のはずだった。そう、思っていたのに。
「まったく……上機嫌だったり急に落ち込んだり鬱陶しいのだよ」
「別に落ち込んでなんかないっすよ」
何言ってるんすかと力説すれば、呆れたようなため息が返された。



学祭中の学校はとにかく派手だ。校門も普段の姿とは違う。
生徒が楽しむだけでなく、人を呼ばなければならないので当然気合も入る。
「おー文化祭って感じっすねー」
「ホームメイドなのだよ」
手作り感溢れる校門前の入場ゲートに夫々感想を零しながら、入ってすぐにパンフレットを貰う。
クラスは分からないが、バスケ部の出し物に行けばいいはずだ。
「やっぱ運動部はクラスより部活優先のところが多いっすからね!」
教室を確認し、校舎に入るため下駄箱を通り過ぎる。
文化祭中は土足OKの文字にそのまま上がろうとして。
「「あ」」
これまた見慣れすぎた顔に会ってお互い声を上げる。
後ろから悠然と観察する緑間っちはさらにその後ろまで見て呟いた。
「桃井と青峰まで着たのか」
呆れたような緑間っちの言葉に俄然、桃っちが身を乗り出した。
「だって今日は公然とテツ君に会える日だよ!」
「そうっス!最近他校の生徒が学校の敷地に入ろうとすると色々厳しいっすからね」
「おまえはいつも平然と入っているだろうが」
「そんなことないッス。練習試合の挨拶くらいっすよぉ」
全然足りない。本当に、黒子っちが欲しかった。
今でもあきらめられないくらいに。
「それじゃあテツ君に会いに行くよ!」
「そうっすね!」
厳しいツッコミにもめげない。桃っちの音頭に拳を振り上げて答える。
なにせ今日は待ちに待った黒子っちに会える文化祭なのだから。

































7.
化粧にスカートにウィッグ。戦闘準備は勝手に完了。
黙っていても進むその手際に女性の器用さには素直に尊敬する。
だが、それを身をもって体験してもまったく有り難味はない。
ガラリと開いた扉はさらに。
「今日も可愛いわねぇ」
見計らったかのようだ。教室の扉から現れた監督はニッコリと満面の笑みで拳を握る。
「その調子で頑張ってね!」
まったくもって頑張る気は起きない内容だが、ばれたくないのなら自然頑張らなければならない。
そもそも負けることほどつまらないものはない。
こんな遊びであっても、自分の力が発揮できる場所で負けるのはかなり癪だ。
「あ、そうだ。火神君が妙にやる気だしてたから気を付けてね」
何かあったかと聞かれてあれかなと思い当たるものはなくもない。
昨日、彼にだけは会っている。
危なかっただなんて勿論言っていない。
「…・・・ちなみに火神君に捕まったらどうなるんですか?」
「そうねぇ。一応、火神君が自分で自分の労働力を買うってことなんだけど」
「そうですか」
「けど火神君にばれるって精神的に結構こない?火神君にも言ってることだけど……」
何か楽しそうな、どことなく邪悪な笑顔。
何かを企んでいると一目で分かる。
「自分の身は自分で守りなさい」
守るも何も、この格好がすでに守りきれて居ない。今更過ぎる。
だが、その失敗を広めないためならまだ間に合う。
GOサインに控え室となっている教室から出て、とりあえずバスケ部がイベント用に使っている部屋とは反対方向に歩いてみる。
昨日と違って教室内にも結構の人出だ。廊下が狭い。
一般公開の影響か私服の人も多い。
その人ごみに流されるように歩いているうちにある一角に押し出された。
どうしてそこが穴が開くように人が避けていたのかといえば、そこに屯している人たちが多いに原因だったのだろう。
「あぁぁぁぁ嘘っすよねぇ、なんで黒子っち居ないんすかっ」
「俺には行きゃ会えるっていう短絡思考が不思議だぜ……」
「私のデータだって絶対にバスケ部の方に出てるて予想できるのに!」
「シフトというのは常識なのだよ」
ぎゃーぎゃーと騒ぐその声がどこか聞いたことがあるような気がしたが、気にせずに声をかける。
一般参加のようだし、この格好を見せても後々尾は引かないだろう。
「すみません、ちょっと通して頂けます……か……」
呼びかけにくるりとすごい勢いで振り返った彼らはそのまま固まった。
「「「「「……」」」」」
後に引かない、どころではない。
火神君に見つかるよりも性質が悪い。まだ火神君なら大笑いして終わりだろうが、このあたりは後々も散々からかい倒すだろうことが目に見えている。しかも殆ど会う機会がない場所で度々。
思考がまずさを延々と自分に語りかけてくる間、よく知りすぎた顔たちが無言で見合わせることしばし。
「やーんテツ君可愛いーっ」
さすがに桃井さんは立ち直りが早い。
運はさほど良い方ではないが、チョコボールの銀のエンゼルが出るくらいには悪くない。
そのはずなのにここ二日の運勢はどん底だ。
(なんで皆が……)
こんなところに居るのか。
縁を切ったはずで、バスケの試合でもなければ絶対に会わなそうな面子なのにしかもなんで揃っているんだ。
「く、く、く、黒子っち……?」
人違いですと言って立ち去ってもいいだろうか。そうしよう。
瞬時に判断して踵を返そうとしたが、彼らがそれでそうかと帰ってくれるわけがない。
「おいおいなんつー格好してんだよ、テツ。この下どーなってんの?」
押さえる間もあればこそ。がしりとわしつかまれたスカートが捲れ上がる。いわゆるスカート捲りという奴か。初めて体験した。
青峰君はやっぱりそれをやるのか。小学校の時もやっていそうだ。
なんとなく想像できる行動とはいえげんなりとする。
「キャーっ大輝なにやってんのよこの変態!」
「そうっすよ黒子っちのスカート捲るなんて!!」
途端に五月蝿くサウンドする二人に青峰君が顔を顰める。
その気持ちは十分に分かるけれど。
「ぎゃーぎゃーうるせぇよ。男が男のパンツ見たって犯罪になんてなんねぇだろーが」
「スカートを捲るって行為自体が犯罪なのよ!」
それは多分桃井さんが正しい。
ちっと舌打ちを零して青峰君は僕に向き直る。
「おまえそれ何でやってんだ?」
「文化祭の出し物です」
「そりゃ見て分かるけどさぁ」
上から下までじろじろと観察する青峰君の視線に平静を装ってじりじりと後ろに下がる。
あとはミスディレクションを発動させて身を翻すだけだ。
「ということで僕は失礼します」
答えることは答えた。
いつまでもこんなところに居るのはルール違反でもある。なんせ背の高いバスケ部員が三人も揃っていれば人は怯えて近寄ってこない。人の多いところに居ること、というのが監督の指示なのだ。
「どうやら黒子を捕まえるゲームみたいなのだよ」
どこで聞いてきたんですか緑間君。
思い切り顔を顰めたい。
余計なことを。だから緑間君は苦手なのだ。
「つまりこのままおまえ連れてけばいいんだな?」
ニヤリと大人気ない笑みを浮かべた青峰君が笑う。
まるで獰猛な獣そのものだ。どうやってこれを撒こうか。頭を悩ませたってそう出てくる案は無い。
「へー黒子っちが引換券なんだ。景品はなんなんすか?」
「労働力です」
「「「「……」」」」
一様に押し黙る。
『え、誰得?』
『一般参加者にメリットがまったく無いのだよ』
心の声は口には出ていなくてもしっかりと顔には出ている。
「あ、いやでも他校の文化祭だし案内とかしてもらったらいいかも!」
「火神君にそんなことさせたら皆逃げます」
「え、火神っち……?」
ますます分けが分からないと目を白黒させる黄瀬君に何もかも分かったとでも言うように緑間君が眼鏡を上げた。
「つまり、捕まることなどありえないという自信の表れなのだよ」
「というか脅しですが」
「脅し……」
なんでそんな物騒な単語が。そんな困惑が広がりますます僕に集中が集まる。
もしかして一から十まで全部事の成り行きを説明しないとこの注目を解いてもらえないのだろうか。
(火神君だけでも厄介なのに、なんでこんな……)
まったくもってついてない。

































8.
生ぬるい声援に見送られて今日も今日とて写真の女を探しに教室を出る。
昨日あの後はまったく駄目だった。
さほど広いとも思わない校舎内で一人の人間を見つけることがこんなに難しいものなのか。
(ほんと、黒子でもあるまいし……)
「つーか、あれ?黒子はなにやってんだ?」
思い出してみると昨日から見ていない気がする。
別に部活の手伝いは無いはずだし、クラスの方でなにかやっているのかとも思うが。
(いや無理だろ……)
クラスの出し物は完全に接客業だ。気付かれない接客なんて意味がない。というか気持ち悪い。
だとすると文化祭自体ふけて屋上にでも行っているのか。
(なんか腹立ってきたな……あいつも借り出すか)
俺だけが苦労するなんて不公平だ。他の一年には思わなくても、セット扱いされることの多い黒子には思うところがある。
思いついたらrメイン通りと化している校庭を避けて屋上方面へと反転する。
「げぇ」
思わず嫌な顔をすれば相手の反応もまったく変わらず。
互いに見合わせた顔を顰めながら相手の次の挙動を待った。
「あ、火神っちじゃないっすか」
珍妙な呼びかけと人懐こい様子で近づいてくる男も含めて見覚えがある。
ずらりと並ぶその面子の豪華なこと。思わず顔が引きつるくらいだ。
自分と目線が合う集団というのはそう居ない。
「高校が違うわりにゃお揃いで。キセキの世代ってのは随分仲がいいんだな」
「そんなわけないじゃないっすか!」
「全力否定かよ」
仮にも元チームメイトだろうに。いいのかそれ。
「私たちが集まる理由は一つだけですよ」
自称黒子の彼女がずいと出てきて指をぴっと立てた。相変わらず美人だが、幸いなことに俺の好みからは外れていて監督の鉄拳制裁対象にはならない。俺はどちらかというともうちょっと大人しそうな儚げなのがいい。丁度今追いかけている女の写真が頭を過ぎる。それから、今呼びに行こうとしていた奴の顔が。
そして奴らの目的が唐突に分かる。仲が良くも無いのに休日に集まる理由。
(そうだそんなの一つしかねぇ……)
青峰はどうだか知らないが、黄瀬は黒子を勧誘に来たし、あの女マネージャーも黒子の彼女を公言するくらいだ。
緑間もなんだかんだと言って黒子が居る場所に現れる。
「黒子はいねぇよ」
「へ?何言ってるんすか火神っち」
親切心というよりは八割面倒事の回避のために教えてやれば、意外な反応を返された。
まさかと思う。
「おまえら見たのか?」
とするとサボっているわけじゃないのか。
となると当てが外れる。ここでこいつらに会ったのは無駄足にならなくて良かったということか。
「さっき……もごっもごもごっ」
「テツならさっき会ったぜ?」
黄瀬がもごもごと何か言うのを無理やり塞いだ青峰に向き合う。
ニヤニヤとガラの悪い笑顔は胡散臭いことこの上ない。そういう意味では黄瀬は比較的信用できるのだが。
「ならなんで今一緒じゃないんだよ?」
明らかにこいつらの目的はあいつだろう。会ったのならどうして手放したのか。
ふんと鼻で笑う。
「その様子じゃおまえ知らないんだろ?」
なんの話だ。青峰の含み笑いがニヤニヤと鼻につく。
教えてやるわけないだろうと言いながら、それで遊ぼうとする意図が分かりすぎだ。
「勝負すっか?」
「何をだよ」
ニヤリ、とそれは掛かった獲物を甚振るような笑みで。
「どっちが早くテツを捕まえるか」
上等だ。地の利はこちらにある。
あいつは自分のもんだっていうその思い上がった考えを打っ潰してやる。

































9.
さてどうしたものかと立ち止まってその騒ぎを眺める。
ああ、まったく。どうしようというかどうしようもないというか。
「今日の運勢もしかして最悪なんでしょうか」
さっき緑間君に会ったときに聞いみればよかった。
思いつかなかったなんてその時点で頭が働いていない。集中力が切れているのかもしれない。
こんな服装になった時点で、朝からツイテいない。
「なんで居るんですかね……」
あの迫力では青峰君たちと勝負でもするのだろう。勝負内容は容易に想像が付く。火神君と、僕の反応を見て面白がらないわけが無い。
そろり、そろりと後ろ足で移動する。
皆まだ僕には気づいていない。互いに集中している。
切欠はすぐに来るだろう。この距離では気づかれたら終わりだ。ミスディレクションもどれだけ効くか。
火神君は良くも悪くも僕に慣れている。だから見つかる可能性が高いのだろう。だとすれば対策は徹底的に目に触れないようにするしかない。できるだけ視界の外に、ミスディレクションを使うまでも無くこちらからも見えないように絶対に近づかないようにしようと思ったのに。
「あ!」
誰かが僕を見て声を上げた。しまった、火神君たちに集中しすぎたせいで他への注意がおろそかになった。他に捕まっても面白くない未来が待っている。火神君たちも周囲のざわめきに顔を上げた。
それがスタートの合図。
もうミスディレクションなんていっている場合じゃないと思って駆け出す。スカートの裾がひらりと広がって足に絡みつく。
唯でさえ足は速い方じゃないというのに、走りづらくてこれではすぐに追いつかれてしまう。
「おい、待てよっ」
ああ、もう。なんで追ってくるんですか火神君。バスケ部の人間が自分に用などないはずだ。そのはず、なのに。
しかも多分あれは追ってるのが僕であると気づいていない。どうせ捕まるならせめて分かっている青峰君たちにしてくれないだろうか。それはそれで面白くないけれど。
「黒子っ」
強引に腕を捕まれて引かれる。勢いのままどんとぶつかった背中は広い火神君の胸に抱えられるように受け止められた。
叫ばれた自分の名前にどう反応していいのか分からない。
まさか呼ばれるなんて思ってなかった。絶対に気づいていないと思ったのに。
「……なんで分かったんですか?」
「分からないわけねぇだろうが」
ずっしりと重い肩に縫いとめられて足が止まる。引きずって行くほどには力が無い。
僕と彼で力比べをする方がどうかしている。
「監督がこういう行事に他所から助っ人なんか呼ぶわけねぇし」
冷静に考えればあの監督が考えそうなことはいくら火神君だって分かるだろう。
誰かを探すということなら一番見つけにくい人間を据えるだろう。うってつけな人間が居るのだから。
それがただ女じゃなくて男だったからスカートをはかせただけで。
「バカガミ君のくせに」
ぼそりと呟いた言葉は完全に負け惜しみだ。
なんだか負けたみたいで悔しい。
「おまえな……」
背中で低い声が唸るように吐き出されて、ぎゅっと腕で首を絞められる。
加減されたスキンシップはけれど僕にとっては結構苦しい。
「俺がおまえを分かんねーはずねぇだろ」
「昨日、分かってなかったですよね」
「……おまえがんな恰好してるからだろ!!」
「そういうルールなので」
できるだけ平静を装ってしれっと返す。
照れたりしたら揶揄の餌食になるのは分かりきっている。ここは平然とした顔を保って乗り切るべきだ。
「僕は火神君が女装してても分かりますよ」
「……分からなかったらすげぇよ……」
僕の一言にがっくりと肩を落す。力が抜けたようなのにまったく動けないのはどういうことだろう。

































10.
うーんともはや抱き合ってるようにしか見えないその光景を教室から見下ろす。
彼らはすっかり忘れているようだけれど、渡り廊下の真ん中でやっていたらそれはもう丸見えだ。
黒子君の影がいくら薄かろうが、あの派手な行動では見つからない方が奇跡というもので。
「身長168センチの57キロなら一般的に小柄な部類には入らないはずなんだけどねぇ」
バスケ部員で考えるから極端に小さく見えるけれど、最近の若者は165センチくらいの層が増えた。170センチあったらいいなという男子は多い。つまり一般的には大きくは無いが、小さくもない、そのレベルのはずなのだが。
「火神君の隣に並んでるとほんと華奢で小さな美人にしか見えないわぁ」
印象の薄さは女装という服装と化粧でかなり解消されている。
女性であれば黒子君は背が高い部類に入るけれど、一緒に居るのが火神君では小ささを強調するだけだ。
人はその対比から一緒に居る彼女をもっと小さく見積もるだろう。
「まぁ、結局火神君が捕まえちゃったわけだけど、バスケ部的には損失はないしいっか」
本当は捕まらない予定だったのだ。黒子君が捕まることなどありえないと思っていたのだが。
捕まえたのがバスケ部のメンバーであれば黒子君の面目も保たれる。バスケ部のメンバーはもうほとんどが知っているのだから、知られて困ることもない。
もし、誰かがこれを見ていたとしてもそれこそ幻の六人目の噂と同じくらい疑わしい信憑性の噂話となるくらいだろう。
「さーて、それじゃあ終了のアナウンスでもしましょうか」
くるりと振り返ると、窓の外に向けて合掌している部員の姿がある。
男共には何かが哀れに見えたらしい。
「何やってるの、捕まったから撤収の準備するわよ!」
「いや……黒子も、火神も、哀れすぎるだろあれ……」
方や知られたくなかった男に女装を知られ、あまつさえ抱きしめられる黒子。
方や知らなかったとはいえまるで恋する男のように追い掛け回して捕まえた火神。
(まぁ、いいんだけどな……)
たとえそこで淡いピンクの感情なんかが始まってしまったとしても。
本人達が良ければ問題はない――はずだ。