ウィルスバスターズ L :


「……ロックオン」

ビシリと服が裂ける。電脳世界の中で起こっていることを察し、腕に手を掛ける。
そろそろ、限界だろう。
いつも飄々とした男の表情も険しい。
回線を強制的に切断し、リアルワールドに呼び戻すのが今回の刹那のミッションだ。二人では行けない。戻ってこられなくなる恐れがあるからだ。
もどかしく思うこともあるが、これがウィルスバスターにおいて最善の方法だった。

「っ……」

男の体が揺れる。言葉にならない声が零れる。
触れた腕に力が込められた事に気づき、手を放す。
もうロックオンの意識はリアルに戻ってきた。
強制的な切断は身体への衝撃と意識の混乱を引き起こす。慣れもありマイスターはその意識の混乱は最低限のものであるが、身体への負担は電脳世界でのダメージ影響を受けることもあり普通より大きい。
故に男の息が整うのを待って問う。

「ミッションは」
「プランDへ移行だ」
「了解」

プランが移行するのであれば実体である自分たちの体も移動させなければならない。自分たちは電脳世界に入るため機械を経由する必要は無いが、リアルの位置で行ける範囲は制限される。接続にはポイントがあるのだ。
そのために歩き出したロックオンがふと一瞬振り返る。

「助かった。サンキューな、刹那」

肩越しの一言に問題ないと答える。満足そうにロックオンは笑う。それがいつものやりとりだった。



※3/31加筆修正