懲りない男:


「いい尻」

ぎょっとしたようにアレルヤが身を引いた。
しまった本音が出た。
まあでも貶しているわけでもないし、同僚とのちょっとした雑談くらい許されるだろう。まして本人に言っているわけでもないからセクハラでもない。
00ガンダムの調整をしているのか何か指示を出しながらもコックピットへは入らずに尻を突き出すような格好はぎゅっと引き締まった尻が強調されてそそる。思わず撫でたくなるくらいだ。
元々ここの制服はピッチリとしていて体のラインが出るタイプで、常々そんなことを思っていたりもする。
この際だ。少しくらいそんな話をするのもいいなと思って素直に続きを口にしてみた。

「胸はないけど、尻は引き締まっててなかなか……」
「刹那の前でそんなこと言ったらナイフの錆になりますよ」

どん引いたアレルヤにそう言われて、彼の感想は聞けずじまいだ。
まぁ本人に言う勇気はさすがにない。
『やだーロックオンってば』な事態にはならないだろうどう考えても。

「接近戦のエキスパートですから」
「んなこと言ったってなるだろ?そういう話にさ。フェルトも刹那も美人だし」
「まさか!」

とんでもないとブルブルと首を振られる。
恐ろしいとでもいうような反応に首を傾げながらまぁそういう話にならないというなら、と別の話を思いついた。年頃の男が集まって昼も夜も顔を突き合わせていてそんな話が一度も出ないなんて事は考えられない。

「なんだよみんな巨乳派か。ミス・スメラギが居るもんなぁ」
「そうじゃなくって!」

必死に首を振って否定しようとするからもう少し突っ込んでみる。
止めたいなら興味の無い顔をするのが一番だ。あーでもティエリアあたりに振るのはそれはそれで面白いかもしれない。まぁあれも一種の反応か。

「ボイーンなのもいいけどさ、こうぎゅっと引き締まった尻ってーのもいいぞー」

さす。
感触を伴わないはずの動作が何故か感触を伴って現実にあった。
おそるおそる視線を上げる。

「あ……」
「…………」
「せっせっ刹那……」

冷たい視線が突き刺さる。

「なんの話をしているのかと思ってきてみれば」

つい。うっかり。
勿論そんな言い訳は通じず、腕が振りかぶられる。まぁそれは仕方がないだろうし、パチンという音を覚悟して
―――うっかり吹っ飛んだ。

「変態め」

すたすたと歩いていく刹那の足音を聞きながら見送ることすらできない。
ダメージは深刻だ。

「パチンじゃねぇ……」
「だから言ったじゃないですか」

ナイフ持ってなくて良かったですねと呆れたように言われたが、あまりよくも無いだろうこの痛み。

「下手したら奥歯折れっぞー」
「そのくらい、可愛いものじゃないですか?」

ひょいと肩を竦めて答えたアレルヤの顔を思わず見る。可愛くないだろう全然。それは。
ちょっとこいつも可笑しい。
刹那がグーで殴った根源が少しだけ垣間見えた気がした。
きっと可笑しい奴らばっかりだから刹那も手加減が分からないのだろう。
とりあえず。

「やっぱいい尻」

故意ではなく事故だと主張するけれど、その感触を思い出してうんと肯く。その隣で懲りない人ですねとアレルヤが感想を零した。

































胸:

「刹那、胸大きくなった?」

むに、と






だってそれを好きと言わない: