震える喉に喰いついて噛みつく。
恐いと叫ぶ声をねじ伏せ、流れる涙を無視した。

「や……ガイ……」

その声に。愉悦に震える自分を自覚して、愕然とする。
止まらない体。止まらない涙。止まらない
――――激情。




目が、覚めた。
ぴよぴよと頭の上をひよこが回っているような気がして、ぐしゃりと髪を崩した。
「…………」
虚しい。虚しすぎる。
窓から差し込む爽やかな朝の光がより一層虚しさに拍車をかける。
「しかもなんでルークなんだ……」
ガイとて立派に健全な成年男子だ。溜まるものは溜まるし、女性に触れられないのだからある意味し方が無い。
だからといってアブノーマルに走るわけではないし、いたって自分はストレートである。
その、はずである。
なのにどうしてティアやナタリアや年頃で一般的に見て魅力的な女性じゃなくてルーク?
(いや、女性陣でも困るんだが……)
そんな夢を見てしまったらさすがに気まずい。
(でも、やっぱりなぁ……)
納得いかないのは相手がやはり男だからか。
いや、そもそもその子供は夢とはいえ汚していい存在ではない。
剣の主をそんな目でみるのは大いに間違っている。
それに見かけはどうであれ本当にまだ子供なのだ。とりあえず七歳児に手を出したら犯罪だ。
「……はぁ……」
朝から元気になった自身に思わずため息を吐く。
幸か不幸かルークと二人部屋だったから誰かに気づかれる心配というのは無いが、朝に弱いルークはきっと無防備な顔をして寝ているに決まっている。
「それでまた元気になっちまったら立ち直れないよなぁ……」
情けないがトイレに行こう。そうしようとベッドから降りた瞬間。

「なにやってるんだよガイ」

(ジーザス!!)

思わず天に向かって仰ぐ。

(どうして今日に限って早起きなんですか、神様)

いつもは起こすまで絶対に起きないはずなのに。
変わると決心してからのルークだってそれだけは変わらなかったはずなのに。
これは俺への試練なのか……!?
女性恐怖症から抜け出せない俺に新たな道を踏み出せというのか、ルークへの蟠りをぶちまけた俺に新たな一歩を踏み出せというのか。
冗談じゃない。

(頼むから気づきませんように!)

「ガイー?」

ベッドの上で目を擦りながら呼びかけてくるルークにままよと向き直る。
白い喉が、シーツが半端に掛かった白い腹が、視覚を刺激して、ごくりと唾を飲む。
夢の光景がちらりと横切った。

「おはよう。早いな、ルーク」

起こしたか?と聞いてみればうぅ〜んと寝ぼけた声が大丈夫だと答える。
どきりと心臓が鳴ったのは気のせいではない。
(なっなんだなんだなんだ。なんだっていうんだー!)
俺はノーマル。ルークは男。
ぶつぶつと口にしながら、それでも収まらない衝動にこの先が少し不安になった。



は俺の中に居る