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ああ、憂鬱だ。
罰掃除なんて俺こっちに来て初めてやった。そりゃそうだ。ファブレの屋敷じゃメイドがいるから罰でだって掃除なんてものは出てこない。任務失敗ったって別に俺の所為だけじゃぬぇーのにさ、ちぇ。
それにしてもティアは何故俺の名前を呼んだのだろう。ジェイドは何故あんなことを言ったのだろう。彼らは俺を『ルーク』と呼んだ。もうそれは俺の名前じゃないはずの、名前。
アッシュに返した。今は俺が燃え滓。
何故、というのは正しくないか。知っているのだ、それはもう確定している。
ローレライは何も言ってはいない。聞いていない。皆は還る理由が無い。ローレライがどうにかできるものでもないだろう。
俺が還れたのは多分俺がレプリカだからで、ローレライの力が及ぶ第七音素で形作られたからで、消える体も作られる体も第七音素だからできることだ。
そう、思っていた。

「あんたさぁ、掃除くらいまともにできないわけ?」
「……えーちゃんとやってるじゃんか」
「アッシュ、下手」

シンクの呆れたような口調はともかくアリエッタにまで言われてちょっと落ち込む。シンクはいつもちょっとこう棘があるっていうか斜に構えてるところがあるから慣れてるけど、アリエッタの言葉ってなんかこう純粋なだけかなりへこむ。
どうせどうせ……まぁ掃除なんて最後に綺麗になってればいいんだろ。っつかここ綺麗にしてどーすんだ。
ぐるりと見回す。只今ザオ遺跡の最深部、ダアト式封呪扉前。
なにやってんのさっさと手動かしなよ」

「あーうん、やってるやってる」

なぜか俺は懐かれている。あんなに嫌われていたのにどうしたことだろうか。
アッシュの奴、実は子供に懐かれるタイプなのか?まさか。アッシュは子供に泣かれるタイプに決まっている。意外と師匠が子供に懐かれて、ガイもやっぱり懐かれて、ジェイドは絶対怯えられる。決定。

「でもその前にお客さんじゃね?」
「あんたの掃除なみに下手な気配の隠し方だね」
「ありゃ隠してなんかねーんじゃねーかなー」

正々堂々っつーか、隠す必要性を感じていないというか。

――――何のようだい?」

シンクが冷たーい声を出す。
勿論、こいつも負けてない。声の温度で言うならシンクの方が低いけれど、喰えなさ加減がジェイドの方が上だ。シンクの仮面とジェイドの笑顔がいい勝負。

「返して欲しいものがありまして」

ジェイドはあくまでにこやかだ。おっそろしいほど笑顔。なんだか疚しいことなんてなにもないのに謝りたくなるような顔。
……えーと、なんだろう。なんかあったっけか。
イオンはそっちにいるだろー書状もかっぱらってないし。そういやアニスが足りない。けどアニスは俺たちの所為じゃないし、無事にカイツールにいるはずだし。っていうかなんでこいつら此処に居んの?アニスは居ないはイオンはそっちに居るは、用無いだろ?
うんやっぱりわからぬぇー

「知らないな」

本気で知らないのでできるだけ突っぱねるように短く答える。あんまりフレンドリーに接するのはやっぱり色々不味いだろう。

「ルーク、おまえそれは無いんじゃないか?」

探していたんだぞと出てきたガイに、思わずおまえもかっと内心突っ込む。懐かしさとか、嬉しさだとかよりも、なんでこんなに皆居るんだと言う方が気になった。

「ずっとずっと探していた。アレが帰ってきても認めずに、おまえだけをずっと探していたんだ」
「そんなこと言われたって知らないものは知らないんだ」

ジェイドの言う通り、そんなに探してくれていたことを知って否定するのは確かに残酷なのかもしれない。
けれど、だけど、さ。

「何言ってるか知らないけど、あんたらのルークは後ろにいる奴だろう。こいつはルークじゃない。アッシュだ」

なんでそこでおまえが怒るんだよと思いつつも、シンクの言葉はまさに俺の言おうとしていたことだったから頷いた。
爆音、爆風。
……いや、けどさ、シンク、おまえ何やってんの。

「いいぜ、ガキども。相手してやる」

ガイって意外に好戦的だよなーあれ昔からそうだったっけ?それともこいつ俺の知ってるガイじゃないのか。
いやいやいや。さっきの台詞からしてもそのものなんだけどっ。
どったんばったん。
流石にイオンは後ろに下がってニコニコ傍観してるけど、ティアまで……あ、アッシュはちゃんとイオン守ってる。なんかさ、あいつが良識人に見えるんだけど。
ここ地下だろ、あんまり派手に暴れたら崩れるんじゃぬぇー?ガイもジェイドもティアも前のときよりよっぽど破壊力上がってるんだから。しかもなんかお互い容赦ぬぇー
そしたらヤバイだろ。色々手間だろ。

「おまえらいい加減にしろよぉ!!」

とりあえずここいら一体崩れる前に撤退しよう。掃除なんて知るか馬鹿!



は屑箱へは灰皿へ
(後編)