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1/わたしからあなたを奪ったこの世界なんて 滅んでしまえ:
お兄様、お兄様、お兄様。
お兄様がいればわたしはそれでよかったのに。
それが幸せだったのに。
わたしからお兄様を奪ったから、嘘が嫌だったから、わたしはその鍵を手に取ったのに。
わたしは明日が欲しかったわけじゃない。
わたしはお兄様がほしかった。
ずっとそばに居てくれる、いつもの優しいあなたが。
「ナナリー」
黒い仮面を被った人が私を呼ぶ。
お兄様を殺した人。
なのに私は今日もその人の手を取り、世界の安寧を願い笑うのです。
ああ、あなたを奪った世界など滅んでしまえと願いながら。
あなたが望み、あなたが残した明日が壊せずに。
2/どうして どうして どうして:
「スザクさん、どうして?」
拘束を解かれ、優しく抱き上げられてそっと囁く。
違う。そんな小さな声しか出なかった。
泣き叫んだ声は枯れて囁くようにしか、言葉は出なかった。
「どうして、お兄様がゼロなのに。どうして、お兄様は世界を手に入れたのに。どうして、あんな約束を」
「ルルーシュ、は……大切なものが多かった。優しすぎたんだ」
ポツリと囁きは返される。
その声量は周囲を慮ってのものだと思うと腹が立った(本当は、彼も虚脱感でただ声が出なかっただけ)。
「知ってます!そんなの、わたし、しってる」
手をなぎ払うとふらりと傾いだ(彼がたったそれだけの力でよろめくなんてありえない)。
叫んでも、叫んでも、他人には届かない声。
熱狂の渦はわたしのお兄様の死の上にあった。
3/現実的な傷口よりも 見えないナニカが痛すぎる:
「怪我はありませんか?ナナリー様」
拘束具で手や足は擦り切れた。
叫びすぎて枯れた喉はヒリヒリとしている。
でも私は首を振る。
私は痛くないの。
だってお兄様のように剣が刺さったわけではない。
お兄様のように血が出ているわけではない。
お兄様のように高いところから落ちたわけじゃない。
痛くはない。ないのに……
「ナナリー様、ナナリー様」
でもどうして。
イタイ、イタイ、イタイ。
ジクジクとした現実的な痛みはないのに、どうしても痛みが止まない。
痛くて、痛くて、涙が止まない。
4/裏切り者め 地獄に堕ちろ:
「どうして、渡したりしたの」
たとえギアスを掛けられても渡さないと誓ったのに。
ダモクレスの鍵。
お兄様を止める最後の砦。
あれを渡さなければお兄様はその道を進む事はできなかった。
私が思っていたこととは違う鬼でも悪魔でもない、優しいままのお兄様だった。
止めるものは違ったけれど(これ以上罪を重ねないようにと、お兄様の犠牲で世界を変える事と)止める方法は同じだったのに。
ああ、裏切り者の私の両手。
ギアスに屈し、渡してしまった私のこの手こそ。
いっそ地獄に堕ちてしまえばいいのに。
5/嫌いだ お前なんか嫌いだ 永遠を誓ったくせに どうして帰ってきてくれないんだ:
ずっと側に居るよ、ナナリー。
大丈夫。俺がいるよ、ナナリー。
そう言ったくせに。約束すると言ったくせに。
私の手をすり抜けていったあなた。
止めたいと願ったのは、あなたにそれ以上の罪を負って欲しくなかったから。それはつまり罪を負った所為でどこかへ行ってしまうことが嫌だったから。
止められると思った。それが私のためだと知っていたから。
違うと言っても少しくらいそれはあるはずだ。
”愛しているよ、ナナリー”
その言葉は決して嘘でないと知っていたから。
だから、止めたかったのに!
永遠の誓いの通り、ただ側に居て欲しかっただけなのに。
こんな最後なんて絶対に認められはしないのに。なのにどうして私は今も一人なんだろう。
本当にお兄様の目的は私のためということなどなかったのだろうか。世界中の人のため、その一つに過ぎないのだろうか。
私だけのお兄様ではいてくれなかった。
ずっとずっと側に居るといったくせに、結局兄は私よりも世界を選んだ。
だから。
「お兄様なんて嫌いです」
だってあなたは今も帰ってこない。