カケラオドル:
キセキの世代なんて言われたって、それは集団についた名称だ。
個々人に付けられた格付けがどの程度かなんてその言葉だけでは分からない。
そこにも確かに格差はあるのだ。
「くっそーやっぱだめかぁ」
勝てる、勝ちたい、勝たなければならない。
どう言ったとしても勝てなかったことを表している。
青峰っちは憧れだった。あんな風に強くなりたいと思った。
自分が真似できない強さに引き付けられた。
けれどふと考える。
「先輩もがっかりしてるだろうなぁ」
キセキの世代を得たはずなのに、同じキセキの世代のチームに負けた。
それはその格差なんじゃないかって。
「俺じゃなくて青峰っちが欲しかったって言われないっすかね」
弱音はけれど否定される。
して欲しい方向に。
「誰が欲しいかなんて結局人それぞれでしょう」
「そうっすかね」
「チームワークを大事にするところでは青峰君はNGですし」
「いやーそれは俺らの世代はみんなそうじゃね?」
協調性は皆無だ。みんな自分が一番だと思っているに違いない。
自信があるといえば聞こえがいいが、つまりは自分勝手な集団だ。
「青峰君はその意味でも格別です」
「……確かに……」
練習にでなかったり、挑発したりというのはない。そこまで自分に自信をもてないというよりはそんなことをしても楽しくない。
一応俺たちは標準的な中学生の枠には嵌っていたはずだ。
懐疑的だった自分の中ですんなりと彼の言葉が落ちていく。説得力は満点。黒子っちは説明が上手いのだ。
「黒子っち」
「なんですか?」
聞きたいようで、でも聞きたくないことを口にする。
「今、バスケ楽しいっすか?」
きょとんとして彼は俺を見る。
それは多分楽しいかどうかを考えているのではなく、言葉の意図に首を傾げた。
そんな間。
「楽しいですよ」
そう答えられたら凄く悔しいだろうと思った。実際に、悔しくは思う。
けれど彼が笑ってくれるならそれが一番嬉しい。
黒子っちが、バスケを好きでいてくれるならそれが一番嬉しい。まだ、繋がっていられる。
「青峰っちも、緑間っちも、黒子っちも俺も、結局バスケから離れられないっすね」
分かれても皆の名前を聞く。
当然といえば当然で、けれど集団に付いた名称からすれば離れれば消えるのが普通で。
「ばらばらになっても、結局みんなの名前を聞いてるっす」
「そうですね」
君の名前も聞くっすよ。
そう言ったら黒子っちはなんと言うだろう。
当然とこたえるか、そんなことはないと答えるか。俺たちの中で唯一読めない回答。
だけど、飛び散ったはずのカケラは今もそれぞれ踊っている。